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ほら貝blog

6月10日

 新文芸座の仲代達矢特集で「股旅三人やくざ」を見た。短編三本のオムニバスで、第一話「秋の章」は八州役人を斬って親分衆から持て余された千太郎(仲代達矢)が女郎おいね(桜町弘子)の純愛にほだされる話。自分を思ってくれる猪之助がどんな男だったかおぼえていないが、それでもいいと言い切る姿が哀れだ。千太郎は猪之助が佐原に入る手前で自分が殺した男だと気づき、おいねを救う決心をする。様式美の極み。

 第二話「冬の章」は賭場でいかさまを働いて追われた老やくざ掛川の文造(志村喬)を若いやくざ源太(松方弘樹)が助ける。二人は雪を避けるために誰もいない茶屋で暖をとるが、文造がいかさまで稼いだ金の分け前をめぐっていさかいが起こる。そこに茶屋をやっているみよこ(藤純子)が帰ってきて、みよこの母親が亡くなったとわかる。文造はみよこの父親から預かった金だといって、いかさまで稼いだ金をわたそうとするが……。源太が故郷を追われてやくざになった経緯は定住民の論理からいかにもありそうな話。一捻りした人情噺で、絶品。

 第三話「春の章」は旅鴉の久太郎(中村錦之助)が村人たちに鬼の半兵衛という賄賂役人(加藤武)を殺してくれと頼まれる話。久太郎は口だけの男で、いったんは逃げだすが、次ぎに村に来た木枯らしの仙三(江原真二郎)という一見強そうなやくざが鬼の半兵衛に買収される現場を見てしまい、一肌脱ぐ決心をする。徹底した三枚目を演じるとは錦之助は懐が深い。

 公開されている粗筋を見ると春→秋→冬の順番になっているが、春の最後に「完」の文字が焼きこまれているから、すくなくとも最後は「春の章」のはずだ。

 「いのち・ぼうにふろう」は山本周五郎の短編「深川安楽亭」の映画化。

 深川の中洲に一軒ぽつんとたつ安楽亭という一膳飯屋を根城にする悪党一味の話。江戸湾に近いことから抜荷の嫌疑がかかっているが、珍しい海外の品を紀州徳川家に献上して保護を受けているという噂のために奉行所は手が出せない。

 安楽亭に集まっているのは仲代達矢、岸田森、近藤洋介、草野大悟、佐藤慶、山本圭といった新劇の役者たち。紅一点の元締の娘おみつも栗原小巻、与力側も神山繁、中谷一郎、悪役の灘屋も滝田裕介と新劇組だ。いずれも実力派だが、これだけ新劇の役者がそろってしまうと嘘臭くなる。

 この映画が成立しているのは元締めの幾三を演じた中村翫右衛門と、元大工の勝新太郎のおかげだ。この二人の存在感は格別で、ふわふわ浮いていた芝居が地面に根をおろした。

 見どころは遊郭に売られた恋人のおきわ(酒井和歌子)を請けだすために、手代あがりの富次郎(山本圭)が勝新太郎を殺して小判を奪おうとする場面。富次郎は酔って足元があやしい勝新の跡をつけるが、勝新はすべてお見通しで、身の上を語って聞かせ、有り金をすべて富次郎にくれてやる。

 この後に大捕物があり、翫右衛門の見せ場があるが、その後がいけない。新劇俳優の限界である。

6月13日

 新文芸座の仲代達矢特集で「金環蝕」を見た。第三次池田内閣が発足してから池田の健康問題でつぶれるまでの半年余を描いた映画で、傑作と言うには余りにも荒っぽいが、なかなかの迫力。二時間半があっという間に過ぎた。

 誰がモデルか、半分もわからないが、そんなことは関係ない。宇野重吉演じる石原参吉という高利貸しの老人には森脇将光というモデルがいるということだが、乱杭歯で女体を貪る生臭い老人はそれだけで凄まじい存在感だ。すべての登場人物が欲望でギラギラしていて、高度成長はこういう人たちによってなしとげられたのだなと思った。

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