吉田健一

(ヨシダ ケンイチ)

生涯

 1912年、東京生まれ。1977年没。文芸批評家、小説家、英文学者。ケンブリッジ大キングズカレッジ中退。アテネ・フランセ卒。外交官だった父、吉田茂の赴任にしたがい、日本と外国を行き来して育つ。

 ヨーロッパで身につけた正統的な教養と語学力を背景に、当初は英文学者として知られていたが、洗練の粋をつくした悠然たる名文で書かれた評論や小説がしだいに注目をあつめるようになり、近代日本文学の伝統に対するもっとも過激な革新者として認識されるようになった。

 『吉田健一著作集』(集英社、1978-1981年、全30巻、補巻 2巻)、『吉田健一集成』(新潮社、1993-1994年、全 8巻、補巻 1巻)がある。

作品

『ヨオロッパの世紀末』 1970年 新潮社
 世紀末文学は俗悪な十九世紀に対する反抗であり、十八世紀の成熟した文明の再評価だという認識をうちだした画期的な批評。近代日本文学は俗悪なヨーロッパ十九世紀文学をさらに俗悪にしたものであり、この本は日本的な「文学」概念に対する根本的な批判でもある。野間文芸賞受賞。
『書架記』  1973年 中公文庫
 なつかしい本の思い出に託して、旧友をかたり、故人をしのぶ。吉田健一の自伝としても読める名編。
『時間』  1976年 新潮社
 時間は吉田の生涯のテーマだったが、最晩年にかかれたこの批評は吉田の思索の最高峰であると同時に、日本語という言語の内懐でなされた哲学の試みの最高の達成でもある。 小説

『瓦礫の中』
 戦後の混乱の中で家を建てようとする男の物語を軸に、市井にかくれた達人たちを描く。読売文学賞受賞。
『金澤』
 都市論、文明論としても読める幻想小説。馥郁たる名文は読む者を酔わせ、文学の桃源郷に誘う。戦後に書かれた小説のうちで、最高傑作の一つといえる。
『東京の昔』
 吉田の文章ははじめての読者にはとっつきにくいかもしれないが、そんな人にはこの小説をすすめる。戦前の東京で友人と飲みあるくだけの話だが、足元からしんしんと寒さがあがってくる夜半の時間の充実はすばらしく、吉田の文章の魅力が堪能できる。

(C) 2000 Kato Koiti


星座別
総索引