*[01* 原 題<] SF映画の古典とされているが、まだ見ていなかった。2005年版の特典映像で絶賛されていたので、この機会に見てみたが、特撮のレトロな面白さくらいしか見どころがない。
釣りに来ていた二枚目の科学者が、地元のアメリカンガールを連れ、危険を冒して火星人を調査するというストーリーで、一般人がやむなく巻きこまれた2005年版とは違い、いかにも一昔前のSF映画である。原作忠実度は2005年版の方が高い。冷戦下で作られ、ヒットしたということだが、今となっては感情移入できない。敵の明確だった時代と敵の見えない9.11以降では、不安の質が違うのだろう。
特典は充実している。「The Sky is Falling」という回顧ドキュメンタリーは30分と短いながら、生存者や研究者の談話をくみあわせて、当時の雰囲気をうまく伝えている。
ジョージ・パルがハンガリーで「パペトゥーン」というコマ撮り人形アニメの手法を開発し、パラマウントにスカウトされたことはよく知られているが、渡米直前に作った作品ではナチスのオランダ侵攻を諷刺していて、亡命同然にヨーロッパを出てきたそうだ。第二次大戦後、東欧はソ連の衛星国にされたが、東欧出身者の例にもれず、パルも社会主義に対する恐怖をもっていて、それが『宇宙戦争』に反映しているという見方が紹介されていた。
『宇宙戦争』の映画化権は、他の作品の映画化権といっしょに1924年の時点でパラマウントが獲得していたが、技術的な制約からなかなか製作に踏み切れないうちに、作品が古びてしまった。ウェルズ自身、19世紀に書いたアナクロニズムの産物と考えており、映画になるとは期待していなかったという。
その状況を変えたのはオーソン・ウェルズによる伝説的なラジオ・ドラマで、冒頭の15分間がこのDVDにも収録されている(日本でも全編を収録したCD本が出ている)。
映画化はハリーハウゼンも希望していて、デモ用に製作されたアニメが紹介されていた。シリンダーから出てくる火星人がやけにかわいらしく、パルでよかったのかもしれない。
火星人の着ぐるみは、中にはいったチャーリー・ゲモラが自身が製作したという。製作と操作を手伝った娘がインタビューに答えていたが、撮影ぎりぎりまで手直ししていて、ひっくりかえったらバラバラになってしまうような状態だったそうだ。三原色の眼を光らせることになったが、電線をごまかすために、頭に静脈を浮き上がらせることして、グロテスクさがましたという。怪我の功名である。
円盤を製作した美術監督のアル・ノザキは生前に撮られたインタビュー映像で登場していた。オリジナルは銅製で重かったが、ボーイスカウトのイベントで供出されて溶かされてしまい、残っていないという。
「SFの父、H.G.ウェルズ」は10分ほどの紹介ビデオだが、これもよくできている。ウェルズの生講演を聞いたフォリー・J・アッカーマンが、ウェルズの喋り方を真似してみせているのはご愛敬。
音声解説は主演の二人と、研究者の二種。
主演の二人版はアン・ロビンソンばかり喋っていて、ジーン・バリーはたまにしか喋らないし、喋っても映画とは関係のない昔話である。記憶が衰えていることもあるのだろうが、アン・ロビンソンは大部屋女優で、暇だったので、出番でない時も現場に詰めていたのに対し、ジーン・バリーの方は二本の映画をかけもちしていて、自分ので蛮夷が意は知らないという事情もあるようだ。
驚いたのは、映画の公開前に、アン・ロビンソンがパラマウントを解雇されていたという話。いくら大部屋女優だったとはいえ、かりにも主演女優である。ジーン・バリーの方も7年契約だったのに、映画の公開直後、5年の期間を残して契約を打ち切られたという。失敗したならともかく、興行的に大ヒットしたのに、どうなっているのだろう。
他に製作当時の裏話をまとめた16ページのカラーブックレットと、ラジオ版『宇宙戦争』の翻訳の冊子がつく。かなりお買い得である。
画質は色がややケバいが、テクニカラーだけに細かいニュアンスまで出て、非常に良い。円盤の銅の質感が不気味である。音質もこの時代の映画としてはすぐれている。