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ほら貝blog

10月6日

 AFPニュースに「翼竜は飛べなかった?東大研究者が新説」という記事が出ている。

 東京大学の佐藤克文氏は大型海鳥の研究から「体重40キロ以上の鳥は、風速ゼロの環境下では離陸するのに十分なだけの羽ばたきができない」という結論を導きだした。この結果を翼竜に適用すると、体重100kgあったと推定されるケツァルコアトルなど、大型翼竜は風がないと飛びたてないことになる。

 先月、スタンフォード大学で開かれた国際バイオロギング・シンポジュウムでこの説を発表したところ、「「翼竜ファン」の学者たちから非難の一斉放火を浴びた」そうである。

 これまでの説はどうなっているのだろうか。7月に日本未来館で開かれた「翼竜展」の図録から引く。

 しかし翼開長10mのケツァルコアトルが、風のない静かな日に平らな地上から飛び立つためには、時速40kmの速さで地上を走る必要があったとされる。この4本足で歩いた巨大な翼竜にそれが可能だったのだろうか。チャタジーたちは翼の前にある前飛膜が小さい、プテラノドン型の古い復元に基づく模型を使っていたが、イギリス・ケンブリッジ大学動物学教室のマット・ウィルキンソンは、翼竜は前飛膜がもっと大きくて広く、手首から前に伸びる長い翼支骨を上下に動かすことによって、前飛膜を操作することができたと考えている。この模型を使った風洞実験では、前飛膜を下向きにすると前飛膜から翼膜にかけての断面がちょうど飛行機のつばさのように上に向かって流線型に湾曲し、浮かび上がる力(揚力)が増すことが確認された。これはケツァルコアトルが地上を走る速度が遅くても十分に離陸できたであろうことを示している。

 「翼竜展」では翼竜が地上に降りた姿の想像図が展示されていたが、ボードレールの「信天翁」のようになんともぶざまな姿で、時速40kmはもちろん、4kmだって怪しい。いくら翼の形が飛行機のようになっていても、あれでは自力で飛びたつのは無理だと思う。

 翼竜にかっこよく羽ばたいてもらいたいとは思うが、実際は風の力で飛びあがったのではないだろうか。

10月9日

「容疑者Xの献身」

 TVでヒットした「ガリレオ」シリーズの映画版で、キャストとスタッフはTV版そのまま。東野圭吾の原作は『本格ミステリベスト10 2006年版』、『このミステリーがすごい!2006』、『2005年「週刊文春」ミステリベスト10』という三大ランキングで一位を獲得しているということだが、まだ読んでいない。

 「ガリレオ」シリーズは悪玉理系モンスターの仕掛けたトリックを善玉理系モンスターの湯川が見破るという趣向だが、湯川は浮き世離れした学者なので事件には興味がない。そこで湯川の興味を引きつけるために、柴咲コウ演じる女刑事が髪をふりみだして奮闘するわけである。柴咲コウのキャラクタそのままで、TV版はここが一番面白い。

 今回の犯人は湯川の大学時代の友人で、天才数学者なのに家庭の事情で高校教師となった石上(堤真一)である。石上は研究だけが生き甲斐で独身をつづけているが、アパートの隣室の花岡靖子(松雪泰子)に秘かに思いをよせている。靖子はホステスをやっていたが、今は弁当屋をやりながら中学生の娘と二人でつましく暮らしている。

 石上は心ならずも殺人を犯した花岡母娘を救うために大がかりなトリックを仕掛ける。従来の犯人は独りよがりな理系ヲタクだったが、石上はエゴイズムからではなく、愛する者のために犯罪を犯す点が異なっている。

 「ガリレオ」シリーズは理系ヒーローを登場させてはいるが、実は理系人間=ストレンジャー観の上になりたっている。犯人はみな粘着質の理系ヲタクで、共感性の欠如したサイコパスばかりだ。今回、ようやくまともな犯人が登場したと思ったら、結末でそうではなかったことが明らかになる。石上は花岡靖子には同情するが、興味のない人間には冷酷な理系ヲタクのままなのである。

追記: 読者の方から原作は映画版とは違うという指摘を受けた。未読なのでわからないが、冷酷な理系ヲタクではないからこそ、感動を呼んだのだという。(Nov17 2008)

 日本ではトリックを純粋に楽しむ本格ミステリはなかなか受けいれられず、動機面を重視する松本清張流の社会派ミステリの時代がつづいた。「ガリレオ」シリーズはトリックの面白さを一般に知らせたが、理系ヲタクのやることというエクスキューズがついている。半歩前進というところか。

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