*[01* 原 題<] 20年前にコッポラとスピルバーグの肝いりで製作され、全世界で公開されながら、遺族の反対で日本では未公開がつづいている、いわくつきの作品である。
なにが描かれているのだろうと興味津々で見てみたが、意外にもコンパクトにまとまった三島紹介映画という印象だ。自決の日の出来事を時系列で追いながら、過去の回想と、『金閣寺』、『鏡子の家』、『奔馬』を劇中劇として挿入する構成をとっている。アメリカでは、大学の教科書用に、有名作家の伝記と主要作品の抜粋を一冊にしたPortable Readerという本がたくさんでているが、ちょうどそんな感じである。
三島由紀夫に扮するのは脂が乗りきっていた頃の緒形拳で、長官室に立てこもる楯の会幹部の一人に無名時代の徳井優がふくまれている(徳井優の名前はなかったから、当時は別の芸名だったのかもしれない)。
自決パートはドキュメンタリー調であるが、淡々としている。現実はこうだったのだろうか。台詞が台詞臭くなく、妙に日常的な印象がしたが、映画化にあたり台詞はすべて典拠がなければならないという条件が遺族からついたために、片言隻句にいたるまで検事調書や関係者のインタビューにもとづいているそうである。
作品抜粋パートは沢田研二をはじめとして、1985年当時のスター総出演していて、ちょっと驚く。世界公開とか、コッポラという名前がなければ、これだけの顔ぶれはそろわないだろう。
三本の中では沢田研二主演の『鏡子の家』が一番面白かった。李礼仙が清美をやっていて、1970年代アングラの匂いが濃厚だ。
特典の「Inside Mishima」というメイキングを見ると、撮影はほとんど日本人スタッフの手でおこなわれたことがわかる。不自然なところがないのは当然だった。画質・音質とも当時の映画としてはいい方だと思う。