Triumph of the Will

加藤弘一 *[01* 原 題<] Triunmph des Willens
*[02* 製作年<] 1935
*[03* 監 督<] リーフェンシュタール,レニ
*[04* 出 演<] ヒトラー,アドルフ
*[05* 製 作<] Synapse
*[05* 地 域<] R0、NTSC
*[06  枚 数<] 片面2層×1
*[06  時 間<] 110+17分
*[06* 音 声<] ドイツ語
*[06* 字 幕<] 英語
*[06* 画 面<] 4:3
*[07  特 典<] 音声解説(Anthony R. Santoro
*[07     <] 短編映画 »Tag der Freiheit«
*[08* 作 品<]☆☆☆☆☆
*[08* 特 典<]☆☆☆
*[08* 画 質<]☆☆
*[08* 音 質<]☆☆

 1934年、ニュールンベルクで開かれたドイツ国家社会主義労働者党(ナチス)の党大会の模様を記録したドキュメンタリー映画。北米版のDVDしか出ていないが、リージョン・フリーなので日本国内向けDVDプレイヤーでも見ることができるはずである(現在はアマゾン・ジャパンでも購入可能)。

 ナチスの宣伝映画だ、いや記録映画の古典だと毀誉褒貶かまびすしいが、実物を見てみると映像美と迫力に圧倒される。プロパガンダにはちがいないが、映画史に屹立する傑作であることは誰しも否定できないだろう。

 雲海の上を飛ぶ輸送機の映像からはじまる。雲海の下からニュールンベルクの旧市街が姿をあらわし、輸送機が着陸する。ヒトラーがナチスの幹部をしたがえて降りてくる。群衆が歓呼でむかえ、オープンカーでホテルに向かう。ナチス式の敬礼をする人々の輝くばかりの笑顔。

 北朝鮮の映像を見ると栄養の悪い群衆がわざとらしい笑顔を浮かべ、独裁者に必死に手を振っているが、ヒトラーに歓声を送るドイツ人たちは心底うれしそうだ。民衆の表情がここまで違うのは北朝鮮の金王朝が半世紀以上つづいているのに対し、この映画はナチス体制発足一年半の時点で撮られているためだろう。ジョン・トーランドは「もしもヒトラーが政権獲得四周年の1937年に死んでいたとしたら、疑いもなくドイツ史上の最も偉大な人物の一人として後世に名を残したことだろう」と書いたが(『アドルフ・ヒトラー』)、この時期、ナチスの施策はつぎつぎと成果をあげ、ヒトラーとドイツ国民は蜜月関係にあったのである。

 翌朝、朝餉の煙のあがる旧市街の映像につづいて、党員たちが宿泊する郊外のテント村が映しだされる。上半身裸で水を浴び、髭をあたり、朝食を調理し、かぶりつく。ヒトラー・ユーゲントの若者たちが騎馬戦などスポーツに興じる姿も映しだされる。スコップをかついだ農民隊が集団演技する場面も出てくる。鍵十字に麦の穂をあしらった旗を掲げていたが、ナチスは社会主義政党だとあらためて認識した。

 後半、軍事パレードと諸隊の閲兵がつづく。夜の競技場での場面はすごいというしかない。有名なサーチライトを天空に照射し光の柱を立てる場面はもとより、街路を旗の海が埋める場面など鳥肌ものである。

 ヒトラーの演説もすごい。ドイツ国民が熱狂したのは不思議ではない。ヒトラーとナチスの一番輝いていた時期がこの映画に記録されている。

 演説の音声以外、ナレーションがまったくないが、英字幕には人物や場所の紹介が随時はいる。音声解説はニューポート大学のアンソニー・サントロ教授だが、のべつ幕なしに喋っている割りには英字幕に書かれている程度の情報しかない。音声解説は特に聞く必要はないと思う。

 「自由の日」(Tag der Freiheit)という短編映画が特典映像でついているが、これは軍事パレードの部分だけを抜きだしたもので、本編ではカットされた実況録音がはいっている。馬の蹄の音、戦車の轟音、大砲や銃の発射音と生々しい。本編ではパレード部分のみだったが、こちらには歩兵が散開して射撃したり、戦車と野砲が模擬戦を演じたり、上空に飛来した爆撃機の編隊に高射砲を発射したりする場面が映しだされる。実際は軍事演習だったのだ。

 DVDは2000年の製作だが、映像にはかなり傷が残っている。完全に修復するより、これくらいにとどめておいた方がリアルかもしれない。音は帯域が狭いが、雑音はない。映像と較べると物足りないが、時代を考えれば仕方ないだろう。

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