『地球が静止する日』

加藤弘一 *[01* 原 題<] The Day the Earth stood still
*[02* 製作年<] 1951
*[03* 監 督<] ワイズ,ロバート
*[04* 出 演<] レニー,マイケル
*[04*    <] 
*[05* 製 作<] FOX
*[05* 地 域<] R2、NTSC
*[06  枚 数<] 片面2層×2
*[06  時 間<] 98+100分
*[06* 音 声<] 
*[06* 字 幕<] 日本語、英語
*[06* 画 面<] 4:3
*[07  特 典<] 音声解説(監督&ファン)、メイキング、修復前後比較
*[07     <] オリジナル予告編、Movie Tone News 1951、スチル集
*[08* 作 品<]
*[08* 特 典<]☆☆☆
*[08* 画 質<]☆☆☆
*[08* 音 質<]☆☆

 キアヌ・リーヴス主演でリメイクが決まった古典SF映画である。「地球静止する日」が定訳だったが、特典つきのこのバージョンのDVDからリメイク版と同じ「地球静止する日」になった。未読だが、本作の原作をふくむSF映画原作傑作選が『地球の静止する日』という題名で東京創元新社から出ている。

 有名な作品だが、これまで見る機会がなかった。見た感想は微妙である。古き良き時代のアメリカ映画で、光と影を巧みに使った格調高い映像とテルミンによる不気味な音楽でサスペンスを盛りあげる手際はさすがである。円盤内部の透明プラスチックを使った抽象的なデザインは『2001年宇宙の旅』を先取しているかもしれない。

 1951年の時点でこれだけの映像を作ったのはすごいが、しかし格調が高ければ高いだけ、着ぐるみのゴートが登場すると緊張が切れてしまう。当時としては最先端のデザインだったのだろうが、今となってはお笑いである。B級映画だったら心おきなく笑えるが、こういう真面目に作られた映画では応対に困る。

 「Movie Tone News 1951」は公開時に映画館で併映されたニュース映画で、日本が国際社会に復帰したサンフランシスコ平和会議や、マッカーサーの凱旋演説、ミス・アメリカの最終選考などが映っている。時代背景を知る上で役に立つが、朝鮮戦争の話題がないのはただの偶然だろうか。

 特典ディスクの方にはメイキング、修復前後の比較、デザイン集、ポスター集が収録されている。

 メイキングは1時間80分もある堂々たるドキュメンタリーで、関係者のインタビューを軸に関連映像を紹介している。

 監督のロバート・ワイズとプロデューサーのジュリアン・ブロースタインが健在なので二人の話が中心になる。ワイズは白髪で血色がよく、今村昌平監督に似ている。ブロースタインは老人班だらけだが、頭脳ははっきりしている。お婆さんになったパトリシア・ニール、すっかりオヤジになった子役のビリー・グレイがそろって主役のマイケル・レニーをほめまくっている。レニーはクラトゥのようないい人だったらしい。

 作品の背景には冷戦と核戦争の危機があった。製作のブロースタインは平和のメッセージをエンターテイメント作品で発信しようと考え、それにはSFがいいと何百本もSFを読み、ついにハリー・ベイツの原作にめぐりあったという。ジョー・ダンテが現役の監督の立場で発言し、メッセージのある別格の映画ともちあげているが、ご本人の映画はメッセージなしの娯楽映画である。

 最後にコレクターが出てくる。まず、いかにもヲタクくさいポスター・コレクター。大砲を撃っているアメリカ軍を背に、ゴートが金髪の下着姿の美女をだきあげゴーグルから光線を発射している図柄が基本で、いろいろなバリエーションが作られていた。自動車のステッカーまである。大道具コレクターやフィギュア・コレクターも登場する。日本製のフィギュアがいいそうだ。

 スチル集は関連の書類が静止画で収録されている。台本の画像はともかくとして、大道具の設計図や伝票までがはいっている。あまり意味があるとは思えないのだが。

 特典ディスクなしの通常版も出ている。ディープなファン以外は通常版で十分だろう。

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