映画短評:2003年

加藤弘一
2004年の短評
  ★★★ 『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』 金子文紀

TV版は見ていないが、それでもおもしろかった。

 ★★★★ 『ファインディング・ニモ』 スタントン

日本語版で見たが、木梨の子煩悩パパ最高! 室井滋もはまり役!

   ★★ 『ラスト サムライ』 ズウィック

ナショナル・ナルチシズムをくすぐってくれるが、作品的にはイマイチ。

   ★★ 『少林サッカー』 周星馳

アイデアはおもしろいが、コテコテの香港映画。

  ★★★ 『猟奇的な彼女』 郭在容

よくできているが、コテコテの韓国映画。

★★★★★ 『11'09"01/セプテンバー11』

フランス人が勧進元の11人の監督によるオムニバスだが、凡作は2本だけで、あとは傑作ぞろい。ルルーシュと今村昌平は絶品。

  ★★★ 『エルミタージュ幻想』 ソクーロフ

絢爛豪華なロマノフ朝絵巻なのだが、ざらっぽいデジカム画像がマイナス。

  ★★★ 『ハンター』 アプリモフ

狩人部分が半分、カザフスタン版『青い目覚め』部分が半分。

    ★ 『2LDK』 堤幸彦

野波麻帆・小池栄子は大熱演だが、単なる露悪趣味では。

 ★★★★ 『荒神』 北村龍平

大沢たかおと加藤雅也の密室チャンバラ。無言を通す魚谷佳苗もよし。

    ★ 『マナに抱かれて』 井坂聡

癒しの寓話のつもりらしいが、そらぞらしいだけ。勘違いOLには受ける?

★★★★★ 『戀の風景』 ライ

映像美で見せる映画なのに、粗悪なプロジェクターで台なし。アジア・フィルム・フェスティバルなんだから、フィルムで上映してくれ!

★★★★★ 『アフガン・零年:オサマ』 バルマク

タリバン支配がどういうものだったか、皮膚感覚的にわかった。監督の質疑応答はエディトリアルに。

 ★★★★ 『アフガン・ショート・フィルムズ』

5人の作家のオムニバスだが、主人公は全部かわいそうな子供。ユーモラスなタッチが救い。

 ★★★★ 『キリクと魔女』 オスロ

アフリカ民話のアニメ化。おもしろい上に善悪二元論を越えている。

  ★★★ 『ロスト・イン・ラマンチャ』 フルトン&ペぺ

オーソン・ウェルズにつづいて、『ドン・キホーテ』の呪いを受けたテリー・ギリアム。頑張れ、井筒だった復活できたんだ。

 ★★★★ 『復活』 タヴィアーニ兄弟

帝政ロシアの最後の栄華を再現した文芸大作だが、これって人道ストーカーでは?

★★★★★ 『不知火檢校』 森一生

ピカレスク時代劇の傑作にして、座頭市シリーズの原点。勝新太郎は天才だ。

   ★★ 『釈迦』 三隅研次

1960年代の日本映画界の総力を結集した大作だが、ハリウッド映画にもインド映画にもなれなかった。

   ★★ アンダーワールド ワイズマン

ベッキンセイルにファザコン吸血鬼をやらせるのはおもしろいが、演出が独りよがり。

   ★★ キューティ・ブロンド ハッピーMAX ハーマン=ワームフェルド

料金分笑ったが、今回は綱わたりの綱を最後までわたりきれなかった。

★★★★★ 『イン・ディス・ワールド』 ウィンターボトム

アフガン難民の少年の目から描くユーラシア横断闇ルートの実態。これはきつい。

 ★★★★ 『阿修羅のごとく』 森田芳光

木村佳乃がもうけ役。トルコの軍楽を使ってほしかった。

  ★★★ 『マトリックス レボリューションズ』 ウォシャウスキー兄弟

あっと驚くどんでん返しはなかったが、辻褄はあっている。

  ★★★ 『キル・ビル』 タランティーノ

アク抜きされたヤクザ映画。よくも悪くもポストモダン。

   ★★ 『北京ヴァイオリン』 陳凱歌

くどい人情噺。1980年代にあの「出生の秘密」はありか?

  ★★★ 『人生は、時々晴れ』 リー

英国貧乏映画の力作。予定調和の結末がどうも。

   ★★ 『ANIMATRIX』

ゼロ・ワン誕生秘話は期待はずれ。おもしろいのは前に見た「Last Battle」だけ。

   ★★ 『ハンテッド』 フリードキン

贅肉を落としすぎた追跡映画。

  ★★★ 『神に選ばれし無敵の男』 ヘルツォーク

収容所の出てこないユダヤ人もの。地味だが味がある。

  ★★★ 『Xメン2』 シンガー

第一作をしのぐ。アメコミというより風太郎忍法帖だ。

  ★★★ 『恋は邪魔者』 リード

結末はわかっているが、1960年代ファッションと唄が楽しい。

   ★★ 『敵は本能寺にあり』 大曾根辰夫

先代幸四郎主演だが、今の幸四郎そっくり。それだけ。

 ★★★★ 『修善寺物語』 中村豊

頼家が可哀想。

    ★ 『陰陽師Ⅱ』 滝田洋介

第一作の面影なし。見どころは深キョンだけ。

 ★★★★ 『座頭市』 北野武

おもしろかったが、絶賛するほどか?

 ★★★★ 『まわり道』 ヴェンダース

やっと映画館で見ることができた。新文芸座に感謝。

 ★★★★ 『キューティ・ブロンド』 ルケティック

PC的に際どくて、ハラハラする。

   ★★ 『ブロンドと棺の謎』 ボグダノヴィッチ

キルスティン・ダンストが嫌いなので、点が辛くなった。

 ★★★★ 『浮き雲』 カウリスマキ

ヘルシンキのリストラ物語。ハッピーエンドはうれしい。

 ★★★★ 『過去のない男』 カウリスマキ

ヘルシンキどん底生活が楽しそう。ラストもよし。

 ★★★★ 『シモーヌ』 ニコル

ケチのつけどころはたくさんあるが、後半の盛りあがりはすごい。

  ★★★ 『トゥームレイダー2』 デ・ボン

前作よりいいと思うのだが、慣らされてしまったか?

    ★ 『007/ダイ・アナザーデイ』 タマホリ

出涸らし。北朝鮮や透明アストンマーチンまで出したら終りだ。

   ★★ 『アルマーニ』 オーザンヌ

元気のいい爺さんだが、ファッション界は興味がないので。

 ★★★★ 『藍色夏恋』 易智言

古き良き少女漫画の世界。なんという繊細さ。

 ★★★★ 『発禁本SADE』 ジャコ

小またの切れ上がった小品。かっこいい。

    ★ 『HERO』 張藝謀

内戦より共産党独裁体制の方がましだと言いたいのだろう。

   ★★ 『ギフト』 ライミ

ケイト・ブランシェットは好きだが、陰々滅々なホラーだった。

★★★★★ 『終わりなし』 キェシロフスキー

東欧知識人の屈折した心情がそくそくと伝わってくる。

 ★★★★ 『愛に関する短いフィルム』 キェシロフスキー

何度見てもいい。

   ★★ 『パイレーツオブカリビアン』 バービンスキー

ジョニー・デップよりSFXの方が記憶に残る。

   ★★ 『10日間で男を上手にフル方法』 ペトリ

ケイト・ハドソンはコメディエンヌとしては母親におよばず。

 ★★★★ 『マグノリアの花たち』 ロス

感動的。元の舞台が見たい。

    ★ 『グッドナイト・ムーン』 コロンバス

演出がお粗末で、二大女優すれ違いで終わる。

★★★★★ 『めぐりあう時間たち』 ダルドリー

今年のベスト3にいれたい。

    ★ 『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』 McG

騒がしさ全開。疲れる。

   ★★ 『スパイ・ゾルゲ』 篠田正浩

3時間20分は長すぎる。2時間に刈りこめばおもしろくなるのに。

  ★★★ 『焼け石に水』 オゾン

これも舞台劇風密室劇。より緻密だが、地味で閉塞感あり。

 ★★★★ 『8人の女たち』 オゾン

舞台劇風密室劇。女優競演の華やかさが閉塞感を救っている。

★★★★★ 『あにいもうと』 成瀬巳喜男

久我美子のういういしさは今も新鮮。

★★★★★ 『杏っ子』 成瀬巳喜男

香川京子は日本女性の粋だ。

  ★★★ 『ブルー・イグアナの夜』 ラドフォード

場末のストリップ劇場を舞台にした群像劇。

 ★★★★ 『トランスポーター』 レテリエ

お馬鹿映画の傑作。スーチーは喋らない方がいい。

  ★★★ 『リベリオン』 ウィマー

設定は反ユートピアものだが、中味はチャンバラ・アニメ。

 ★★★★ 『メラニーは行く!』 テナント

嫌味すれすれのコメディ。

 ★★★★ 『ミニミニ大作戦』 グレイ

うまくできている! これで主役に華があれば。

   ★★ 『ソラリス』 ソダーバーグ

海が出てこない!

   ★★ 『マトリックス・リローデッド』 ウォシャウスキー兄弟

モニカ・ベルッチの出番はあれだけか?!

 ★★★★ 『僕のスウィング』 ガトリフ

お勉強映画的でもたつくが、素材がすばらしすぎる。

★★★★★ 『SWEET SIXTEEN』 ローチ

英国貧乏映画の最高峰。痛い。

    ★ 『スコルピオンの恋まじない』 アレン

シャーリーズ・セロンの出番はあれだけか?!

 ★★★★ 『誘惑のアフロディーテ』 アレン

見直すたびにおもしろい。

  ★★★ 『刑務所の中』 崔洋一

食事はおいしそうだし、やけに楽しそう。

  ★★★ 『アパートメント』 ミモーニ

ややこしい話。一応辻褄はあっているが。

★★★★★ 『アンドレイ・ルブリョフ』 タルコフスキー

骨太の歴史劇。タルコフスキーは美意識だけではない。

★★★★★ 『僕の村は戦場だった』 タルコフスキー

戦争映画なのに、登場人物がみんな艶めいている。

★★★★★ 『ストーカー』 タルコフスキー

二度目だが、ようやくおもしろさがわかった。

 ★★★★ 『鏡』 タルコフスキー

一度見ただけでは、さっぱりわからない。

★★★★★ 『惑星ソラリス』 タルコフスキー

見直すたびにおもしろくなる。

 ★★★★ 『ノスタルジア』 タルコフスキー

美意識はすごいが、ドラマ部分が弱いような気がする。

    ★ 『愛してる、愛してない……』 コロンバニ

かわいらしい題名がついているが、中味は裏アメリー。

    ★ 『ドリームキャッチャー』 カスダン

出だしはいいのだが、後半は中途半端なSF。

   ★★ 『小さな中国のお針子』 載思杰

文革に対する怨みはわかるが、かなり嫌味な映画。

  ★★★ 『ふたりのトスカーナ』 フラッツィ兄弟

半分ちょっと見て、ようやく仕掛けがわかった。

   ★★ 『アトランティスのこころ』 ヒックス

少年、超能力者の受難、冤罪、幼児姦とキングの十八番がならぶ。

    × 『魔界転生』 平山秀幸

一つもいいところがない珍らしい映画。

 ★★★★ 『少女の髪どめ』 マジディ

アフガン難民もの。泣かせどころを心えている。

  ★★★ 『WATARIDORI』 ペラン

一つ一つの映像はすごいが、メリハリがない。

  ★★★ 『シカゴ』 マーシャル

ミュージカル場面をもっとじっくり見せろ!

  ★★★ 『ヘヴン』 ティクヴァ

キェシロフスキーの脚本は資本主義国では無理がある。

 ★★★★ 『歓楽通り』 ルコント

お伽話から崇高な悲劇へ。

 ★★★★ 『ボウリング・フォー・コロンバイン』 ムーア

深刻な問題なのに、爆笑また爆笑。

★★★★★ 『アイリス』 エア

アイリス・マードックはアルジャーノンだった。

  ★★★ 『至福の時』 張藝謀

盲目の美少女を主人公にした人情噺。あざとすぎる。

★★★★★ 『サタンタンゴ』

伝説の438分映画。見終わって達成感がある。

  ★★★ 『甘い嘘』 ルドゥー

頭の中でこねくりまわしたストーリーだが、それでもリアリティがある。

  ★★★ 『マドモワゼル』 リオレ

切れ味のいい短編を映画にしたような作品。

   ★★ 『ディナーラッシュ』 ジラルディ

ニューヨークの人気レストランを舞台にした群衆劇。

   ★★ 『ピノッキオ』 ベニーニ

いい年して、お疲れさま。

 ★★★★ 『blue』 安藤尋

市川実日子の仏頂面に見とれた。

    × 『クリスティーナの好きなコト』 カンブル

下ネタを売りにしていたが、映画以前。

★★★★★ 『とらばいゆ』 大谷健太郎

この姉妹、最高。

  ★★★ 『コンセント』 中原俊

市川実和子の癖のある顔がだんだん美人に見えてくる。

 ★★★★ 『青の炎』 蜷川幸雄

アラはあるが、孤独な心象風景が切ないくらい美しい。

    ★ 『Dead or Alive Final』 三池崇史

低予算のくせに背伸びをして破綻。

 ★★★★ 『血を吸う宇宙』 佐々木浩久

おふざけ映画だが、奇跡的におもしろい。

 ★★★★ 『火星のカノン』 風間志織

久野真紀子というすばらしい女優を発見!

  ★★★ 『unloved』 万田邦敏

日本では珍らしいディスカッション・ドラマ。

  ★★★ 『国姓爺合戦』 呉子牛

通俗活劇として成功。

    ★ 『燃ゆる月』 パク,チェヒョン

朝鮮古代もの。ちゃち。

  ★★★ 『ダークブルー』 スヴィエラーク

題材はおもしろいが、詰めこみすぎ。

 ★★★★ 『戦場のピアニスト』 ポランスキー

実話の力。

    ★ 『アレックス』 ノエ

ひねくりすぎ。

  ★★★ 『カストラート』 コルビオ

もっとおもしろくなるはずなのに、二番煎じで終わっている。

   ★★ 『トスカ』 ジャコ

舞台裏をまじえたオペラ映画。ねらいがわからない。

   ★★ 『デュラス 愛の最終章』 ダヤン

鬼気迫るはずの部分を避けている。

 ★★★★ 『ウェルカム! ヘヴン』 ヤネス

ダークなコメディ。ペネロペ・クルスは性悪が似合う。

  ★★★ 『レッドドラゴン』 ラトナー

きれいにまとまっている。

  ★★★ 『ボーン・アイデンティティ』 リーマン

よくできているが、軽量。

    ★ 『壬生義士伝』 滝田洋二郎

くさくてくどい。

  ★★★ 『トゥルー・ストーリー』 ジャリリ

イラン得意の子供を主人公にした半ドキュメンタリーだが、病気は反則。

  ★★★ 『愛の世紀』 ゴダール

映像は美しいが、よくわからない。

   ★★ 『そして愛に至る』 ミエヴィル

インテリ女の作りそうな退屈な映画。

    ★ 『千年女優』 今敏

評価が高いが、どこがおもしろいのだろう?

  ★★★ 『この素晴らしき世界』 フジェベイク

よくできたユダヤ人もの。国民和解のメッセージが受けたのだろう。

  ★★★ 『少年と砂漠のカフェ』 ジャリリ

アフガンものだが、抑制した演出が好ましい。

 ★★★★ 『キシュ島の物語』

キシュ島を舞台にした三監督のオムニバス。宣伝映画なのに芸術。

   ★★ 『アフガン・アルファベット』 マフバルバフ

アフガンが舞台の小品に家族ビデオを組みあわせている。

 ★★★★ 『カンダハール』 マフバルバフ

戦火の跡も生々しいアフガン・ロードムービー。

    ★ 『ダスト』 マンチェフスキー

考えすぎのマケドニア・ウェスタン。前作にはるかにおよばず。

  ★★★ 『天国の口、楽園の終わり』 キュアロン

悪ガキ二人が最後に傷つけあう痛ましい青春映画。

   ★★ 『ワンス&フォーエバー』 ウォレス

今さらのベトナム戦争ものだが、丁寧に作ってある。

 ★★★★ 『ブラックホーク・ダウン』 スコット

最初にDVDで見たが、こういう映画は映画館で見ないと。

    ★ 『西洋鏡』 胡安

駄作のくせに、映画愛の押しつけだけは一人前。

★★★★★ 『裸足の1500マイル』 ノイス

強制収容所のような寄宿学校から逃げたアボリジニ姉妹の実話。

 ★★★★ 『阿片戦争』 謝晋

重厚な歴史劇。封切で見たかった。

★★★★★ 『子供たちの王様』 陳凱歌

下放ものの傑作をやっと見た。

 ★★★★ 『黄色い大地』 陳凱歌

何度か見ているが、筋金入りの名作。

    ★ 『ソウル』 長澤雅彦

韓国の生真面目な役者に日本のおちゃらけ警察ドラマをやらせようとして失敗。

   ★★ 『KT』 阪本順治

金大中拉致を描くが、全共闘世代のくさみが強すぎる。

 ★★★★ 『グレースと公爵』 ロメール

フランスの前衛は洗練を極めている。

  ★★★ 『父よ……』 ジョヴァンニ

映画史に残る名画らしいが、コテコテの父子愛情もの。

   ★★ 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 コロンバス

シリーズものの宿命で第一作より落ちる。

  ★★★ 『うつつ』 当摩寿史

手のこんだミステリ。よくできている。

 ★★★★ 『たそがれ清兵衛』 山田洋次

還暦を過ぎた監督が、はじめての時代劇で新機軸を打ちだし、成功している。

2004年の短評
Copyright 2003 Kato Koiti
This page was created on Nov18 2003.
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