映画短評:2004年

加藤弘一
2003年の短評
    ★ 『きょうのできごと』 行定勲

アルトマン型の映画のつもりらしいが、だるい。

   ★★ 『アイ、ロボット』 プロヤス

アシモフの原作とは別物の、そこそこよくできた活劇映画。

★★★★★ 『2046』 王家衛

木村拓也が出ているのでメジャー公開して興行的に失敗したが、本当はミニシアターでじっくり売っていく芸術映画。

★★★★★ 『21グラム』 イニャリトゥ

オカルト映画かと思ったら、正真正銘の宗教映画だった。気持ちのいい話ではないが、深い。

  ★★★ 『アイ・アム・サム』 ネルソン

こういう偽善的な話は嫌いなのだが、よく出来ていた。

   ★★ 『グッバイ、レーニン!』 ベッカー

期待しすぎたが、冗漫。

 ★★★★ 『あなたにも書ける恋愛小説』 ライナー

ロマコメ向きではないケイト・ハドソンをロマコメに活かした職人芸はみごと。

   ★★ 『ル・ディヴォース』 アイボリー

アイボリーは、現代ものだと、お里が知れる。

 ★★★★ 『草の乱』 神山征二郎

秩父事件の映画化。ボランティアを動員したモブ・シーンはすごい。

★★★★★ 『ひめごと』 ブリソー

ラディゲばりに精密に組み立てられた官能ドラマ。こういう映画はフランスでしか作れない。amazon

  ★★★ 『carmen.カルメン』 アランダ

メリメの原作に忠実な映画化だけに、ややだるい。

 ★★★★ 『愛の落日』 ノイス

ベトナム戦争前夜のサイゴンで自堕落な老記者が巻きこまれた陰謀劇。

   ★★ 『華氏911』 ムーア

軽快なフットワークが見られず、ブッシュ憎しでべた脚になっている。

★★★★★ 『女王フアナ』 アランダ

カルロス五世の母親は色情狂だった。

 ★★★★ 『人妻』 シュレイダー

大時代的な低予算メロドラマだが、グレッチェン・モル最高。

 ★★★★ 『誰も知らない』 是枝裕和

見終わってから、じわじわと感動が高まってくる。柳楽優弥もいいが、YOUもいい。

 ★★★★ 『コールドマウンテン』 ミンゲラ

『風と共に去りぬ』をリアリズムで作り直したら、こうなるかもしれない。

 ★★★★ 『ビッグ・フィッシュ』 バートン

ほら吹きパパの真実。泣かせる。

  ★★★ 『キング・アーサー』 フークア

ブラッカイマー版「七人の侍」。キーラ・ナイトレーのグイネヴィアがいい。

    ★ 『アンテナ』 熊切和嘉

昔の自主製作映画を思わせる陰々滅々な独りよがり映画。時間の無駄。

   ★★ 『堕天使のパスポート』 フリアーズ

オドレイ・トトがトルコからの密入国者に扮する。ロンドンの裏社会にはいっていく導入部はおもしろいが、途中からリアリティがなくなる。

★★★★★ 『女はみんな生きている』 セロー

平凡なおばさんが夫と息子に愛想をつかし、瀕死の重傷を負った娼婦を体を張って助ける話だが、後半、どんどん話が広がっていく。結末は痛快。

  ★★★ 『私の小さな楽園』 ワディントン

ブラジルの赤茶けた大地で繰りひろげられる笑うに笑えない四角関係。 女はたくましく、男は悲しい。

 ★★★★ 『シュレック2』 アダムソン&アズベリー

第二作はフィオナ姫の実家篇。これなら次も見たい。今回も日本語吹替はみごと。

    ★ 『スチームボーイ』 大友克洋

「天空の城ラピュタ」の下手糞な模倣。ドラマが貧弱なだけに、無意味なアクションが空々しい。

   ★★ 『ヴァイブレータ』 廣木隆一

昨年の映画賞を総なめにした赤坂真理の原作の映画化。いい作品だとは思うが、こぢんまりとまとまっていて、あっさりしている。

   ★★ 『花と蛇』 石井隆

団鬼六の全10巻の原作の二度目の映画化。前半はどうしようもなくダサいが、SMプレイのはじまる後半はその道の達人が出演していてすごい迫力。本篇DVDの他にメイキングDVDまで出ている。

  ★★★ 『問題のない私たち』 森岡利行

私立の女子中学のいじめを描いた作品。正視に耐えない場面もあるが、最後でホッとした。原作を書いた牛田麻希はまだ十代で、コミック版も出ている。

   ★★ 『東京原発』 山川元

広瀬隆『東京に原発を!』の映画化(パクリ?)だが、絵解きで終わっている。強力な原発肯定論者をぶつけないとドラマにならない。

   ★★ 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』 キュアロン

ダークな色調は悪くないが、時間移動は反則だと思う。

   ★★ 『トロイ』 ペーターゼン

大作の割には薄っぺら。ラストでアエネーイスが登場するが、続編を作るのだろうか。

  ★★★ 『デイ・アフター・トゥモロウ』 エメリッヒ

温暖化の過程で寒の揺りもどしが起こる現象を針小棒大に誇張したパニック映画だが、職人芸で飽きさせない。

   ★★ 『スパイダーマン2』 ライミ

恋と使命の板挟みで早くもスパイダーマンを廃業した悩めるヒーローの再生物語。料金分おもしろい。

   ★★ 『カレンダー・ガールズ』 コール

ヘレン・ミレンが女性版「フル・モンティ」に出たというので期待したが、まあまあの佳作。

 ★★★★ 『しあわせな孤独』 ピエール

全身不随の恋人を看病するけなげな女性がよろめいていくベルギー映画。フランスの心理小説のよう。

   ★★ 『アドルフの画集』 メイエス

貧しい画学生だった頃のヒトラーを描くというアイデアはおもしろいが、ヒトラーの影が薄すぎる。

 ★★★★ 『真実のマレーネ・ディートリッヒ』 ライヴァ

ディートリッヒの孫によるドキュメンタリー。頽廃美はうわべで、実は筋金入りのプロイセン女だったのだ。

 ★★★★ 『真珠の耳飾りの少女』 ウェーバー

泰西名画の世界。小品ながら濃い。

    ★ 『ブラザーフッド』 カン,ジェギュ

朝鮮戦争物だが、盛りあげようとして逆効果に陥っている。韓流映画の悪い面の集大成。

   ★★ 『シルミド』 カン,ウソク

味つけ過剰。題材がいいのだから、表現を抑制すればもっと面白くなったはず。

    ★ 『たまゆらの女』 孫周

勘違い芸術映画。見どころは鞏俐の切なげな表情だけ。

 ★★★★ 『ギター弾きの恋』 アレン

ジャズ版『道』。ショーン・ペンもサマンサ・モートンもはまり役。

★★★★★ 『下妻物語』 中島哲也

抱腹絶倒。深キョンもいいが、土屋アンナすごいぞ。

    ★ 『レジェンド・オブ・メキシコ』 ロドリゲス

柳の下にドジョウは三匹はいない。無理に話を広げて支離滅裂に。

 ★★★★ 『マスター・アンド・コマンダー』 ウィアー

宣伝ではお涙頂戴だったが、実物は骨太の帆船映画。続編が見たい!

 ★★★★ 『ロスト・イン・トランスレーション』 コッポラ,ソフィア

日本人というか業界人を戯画化しているが、映画自体は繊細可憐で、嘆息もの。

  ★★★ 『キル・ビル vol.2』 タランティーノ

哀愁たっぷりで、1よりよかった。

  ★★★ 『死ぬまでにしたい10のこと』 コヘット

カナダ映画だけに、ちんまりとした暗い作品。

   ★★ 『再見−ツァイツェン−』 ユイ,チョン

子供をダシにしたあざとい映画だが、この20年の中国の激変がわかる。

 ★★★★ 『浮草』 小津安二郎

『浮草物語』のリメイク。鴈治郎、京マチ子、杉村春子、若尾文子とキャストがすごいが、戦後の話にするのはやや無理がある。

★★★★★ 『小早川家の秋』 小津安二郎

鴈治郎最高! 憎めない道楽者の爺さんなのだが、最後には人間の格を示す。

  ★★★ 『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』 小津安二郎

弁士つきの上映。蒲田小市民映画の代表作で、映画史上に残る作品ではあるけれど。

★★★★★ 『浮草物語』 小津安二郎

弁士つきの上映。旅まわり一座の座長の人情噺だが、ラストに救いがある。

  ★★★ 『大学は出たけれど』 小津安二郎

活弁つきの新プリントだが、昔見た時よりすこし増えている。主人公はキートンっぽい。

    ★ 『昭和歌謡大全集』 篠原哲雄

お粗末。ストーリーをなぞっただけ。

    ★ 『油断大敵』 城島出

墜落遺体』の飯塚訓氏の原作だが、ただの人情刑事物語。だるい。

  ★★★ 『Appleseed』 荒牧伸志

技術的にはすごいのだろうが、こういう絵柄は好きではない。

    ★ 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』 水島努

劇場版はやたらと評判がいいので見てみたが、なんだ、これは。急に質が落ちたのだろうか。

 ★★★★ 『恋愛適齢期』 メイヤーズ

爆笑、また爆笑の前半も、ほろ苦い後半もすばらしい。女流作家とはつきあうまじ。

 ★★★★ 『ドッグヴィル』 フォン・トリアー

例によって、人間の弱さをネチネチつついた話だが、ラストは痛快ヤクザ映画。

 ★★★★ 『ジョゼと虎と魚たち』 犬童一心

この数年、障碍者ものの映画やTVドラマが出てきているが、これは別格。肩ひじ張って生きる久美子(池脇)、よくも悪くも自然体の恒夫(妻夫木)の組みあわせが切ない。

  ★★★ 『ウェルカム・トゥ・サラエボ』 ウィンターボトム

戦場カメラマンが戦火の中で子供たちを亡命させようと奔走する話。ストーリー部分がニュース映像に負けている。

  ★★★ 『大脱走』 スタージェス

往年のハリウッド大作でも、実話なので、ハッピーエンドにはならなかった。後味悪し。

 ★★★★ 『シティ・オブ・ゴッド』 メイレレス

チンピラの一代記の形をとっているが、真の主人公はブラジルのスラム。

  ★★★ 『秋聲旅日記』 青山真治

いい作品なのに、安いデジカムで撮ったので画像が揺れる。惜しい!

   ★★ 『月の沙漠』 青山真治

出だしはよかったが、途中から普通の映画に。

★★★★★ 『氷海の伝説』 クヌク

イヌイットの叙事詩。名前がおぼえにくい上に服が似ていて、気を入れて見ないとわからなくなるが、すごいものはすごい。

 ★★★★ 『花とアリス』 岩井俊二

だらだらした快楽。少女映画の悪徳を楽しむ。

★★★★★ 『イノセンス』 押井守

いろいろ言われているが、傑作だと思う。『攻殻機動隊』よりもわかりやすい。

  ★★★ 『ペイチェック』 ウー

アイデンティティ探しにしないで、よくも悪くもアクションに徹している。

 ★★★★ 『永遠のマリア・カラス』 ゼフィレッリ

重厚な伝記映画だろうと敬遠していたが、軽妙洒脱なフィクションだった。楽しい!

  ★★★ 『マグダレンの祈り』 ミュラン

アイルランドについ最近まで実在したタコ部屋修道院の話。これが現代の話とは。

    ★ 「赤い月」 降旗康男

ご大層な説教でごまかしているが、ただの淫乱女。

  ★★★ 「山の郵便配達」 霍建起

あざとい設定だが、照葉樹林の美しさは圧倒的。

★★★★★ 『延安の娘』 池谷薫

下放青年が革命の聖地、延安に残してきた娘を追ったドキュメンタリー。笑える場面が多いが、実は深刻だ。

  ★★★ 『チベットの女/イシ』 謝飛

中国融和派のチベット族を描いた優等生的な映画に見えるが、これでも中国では上映できないという。

  ★★★ 『名もなきアフリカの地で』 リンク

ナチスを逃れてケニアにわたったユダヤ人一家の話。「ビョンド・サイレンス」と同じように、娘が救いになる。

  ★★★ 『かげろう』 テシネ

「赤い月」+「流されて」の戦争映画。低予算の小品だが、エマニュエル・ベアールがいい味を出している。

   ★★ 『ゴシカ』 カソヴィッツ

ホラーにしてはまとまりすぎ。破綻はないが、怖くもない。

  ★★★ 『ラブ・アクチュアリー』 カーティス

英国俳優総出演のクリスマス・ストーリーで、いつわりの幸福感に酔わせてくれる。

  ★★★ 『シービスケット』 ロス

井筒監督はけなしていたが、これは傑作。ジェフ・ブリッジスなしでは成立しない映画。

   ★★ 『ションヤンの酒家』 フォ・ジェンチイ

気っ風のいい屋台の姉御が鈴木宗男に酷似した地上げ屋にもてあそばれる話。

★★★★★ 『王の帰還』 ジャクソン

満腹だが、スペシャル・エクステンディド・エディションが出ないと、真の姿は見えてこない。

 ★★★★ 『フリーダ』 テイモア

こんなすごい女を美しい夫婦愛の物語に閉じこめていいのか?!

  ★★★ 『デブラ・ウィンガーを探して』 アークエット

ハリウッドの井戸端会議。美しくなった女優もいれば、醜くなった女優も。カメラは残酷。

   ★★ 『アダプテーション』 ジョーンズ

『マルコヴィッチの穴』ならぬ『カウフマンの穴』。頭が痛くなりそう。

    ★ 『コンフェッション』 クルーニー

俗悪番組のプロデューサーの二重生活。嘘臭いのに重苦しい。

★★★★★ 『二つの塔』スペシャル・エクステンド・エディション ジャクソン

40分ちょっと増えて4時間になったが、あっという間。これでバランスがとれた。

    ★ 『半落ち』 佐々部清

前半はすばらしかったのだが、あの終り方はなんだ!? 一度白けると、有名俳優のカタログに見えてくる。

    ★ 『タイムライン』 ドナー

御都合主義のオバカ映画。空き時間を埋めるために見たが、後悔しきり。

  ★★★ 『恋愛冩眞』 堤幸彦

広末と堤幸彦を見直した。しかし、一番いいのは松田龍平。

    ★ 『g@me』 井坂聡

どんでん返しがすべての映画。仲間由紀恵は娘役はもう無理と判明。

  ★★★ 『ミスティック・リバー』 イーストウッド

あまりにもカトリック的な抹香臭い話。アメリカではオスカーの呼び声が高いが、日本ではもう客足が落ちている。

  ★★★ 『飛ぶ教室』 ヴィガント

名作。ちゃんとした翻訳で読み直したくなった。

★★★★★ 『ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間』スペシャル・エクステンド・エディション ジャクソン

42分長いDVD版の劇場上映。マニアックなお客で混んでいた。

  ★★★ 『MUSA』 キム・ヒョング

『ラスト サムライ』とは逆にアクションは平板だが、話はおもしろい。

   ★★ 『僕の妻はシャルロット・ゲンズブール』 アタル

楽屋落ちコメディ。シャルロット・ゲンズブールじゃうらやましくないな。

   ★★ 『マイ ビッグ ファット ウェディング』 ズウィック

ギリシア系一家がWASPのマスオさんをむかえる話。ギリシャ・ギャグ満載らしいが、これだけ?

 ★★★★ 『トーク・トゥ・ハー』 アルモドヴァル

合法的人形愛。欲をいえば、笑いの要素がほしかった。

★★★★★ 『春の惑い』 田壮壮

古典的恋愛映画をリメイクした濃密な密室劇で、田壮壮らしい格調高い名品。

    ★ 『福耳』 瀧川治水

宮藤官九郎主演のコメディ(脚本は別の人)。演出がくどいが、後味は悪くない。

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This page was created on Jan09 2004.
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